取り込んだモデルデータに不具合がある【社内勉強会レポート】
取引先から受け取ったCADデータに問題が含まれていることがあります。
すきまが空いていたり、一部の面が変換されず抜け落ちていたりなどです。
この記事では、なぜ不具合が起きるのか、どんな不具合があるのかなどを書いていきたいと思います。
目次
トレランスは許容誤差
ソリッドモデルにおけるトレランスとは、隣同士の面がぴったりくっついているとみなせる許容誤差をいいます。
面と面の境界線は、2つの面の輪郭線がぴったりくっついて1本の線に見えます。
トレランスという許容誤差の範囲内のズレはないものとみなすことで、ソリッドモデル上ではあたかもすきまがないように表示するのです。
例えば、トレランスを0.1mmにすれば、0.1mm未満のすきまはソリッドモデルの表示上からなくなります。
しかし、内部の面データ上では、すきまが残ったままになっています。
黄色の中にある誤差はくっつく
面と面のあいだにあるすきまがトレランス値内かどうかで、面同士がくっついているか離れているかの表示が変わります。
黄色のパイプは公差の範囲を表しています。
上画像の黄色い範囲内に輪郭線が入っていれば、画面上で面同士はくっついて表示されます。
黄色の範囲外に面の輪郭線がある場合、面と面のあいだにすきまができ、エラーになります。
トレランス値を確認する機能がある
CAD/CAMの中には、トレランス値を確認したり、くっついていない面を検出してくれる機能が備わっているソフトウェアがあります。
Cimatronにおいては、「ボディ整合性解析」という機能です。
数値を指定して解析すると、指定したトレランス値から外れている、面が離れている境界線を探し出してくれます。
小さいID番号のほうにくっつく
画面上では、トレランス内であれば面同士はくっついて表示されます。
では、どのように1本の線として表示しているのでしょうか。
すきまの埋め方はCAD/CAMソフトウェアによって違います。
CAD/CAMソフトウェア上の面や線には、内部ID番号があり、ID番号の小さいほうを基準にくっつけていることもあります。
これらの処理は、CAD/CAMが自動で行うため詳細は不明です。
面がくっついていないと削ったとき段差ができる
ソリッド対応のCAMは、内部の面データで工具軌跡を計算します。
もし、面と面に小さな段差があり、それをトレランスでくっつけている場合、工具軌跡に段差ができます。
この段差が加工において支障がある場合、ソリッドモデルを修正する必要があります。
金型部品をモデリングするときは、トレランス値は0.001mm以下がおすすめ
CADソフトウェアには、最初からトレランス初期値が設定されていることがあります。
また、トレランス値を変更したり、モデリングしながら、ひとつひとつ数値を設定することができるソフトウェアもあります。
金型部品をモデリングするときは、トレランス値を0.001mm以下に設定しておくことをおすすめします。
表示精度を粗くしたり細かくしたりできる
表示精度は、3次元形状の表示をどれだけ詳細に表示するかを指定するものです。
表示精度を低くすると、面の境界線が粗くなり、見た目がかくかくした線になります。
そのかわり、表示速度が速くなって、操作性が上がります。
点だけでくっついているオブジェクトはエラーになる
以下の状態の時、ソリッドモデルはエラーになります。
- 3つ以上の面に接している稜線
- 2つ以上のソリッドボディに接している頂点
エラーが起きているとモデリング編集ができないため、エラーになっている稜線や頂点を離してあげなければいけません。
点だけでくっついているオブジェクトは、分割して個別のオブジェクトに分ければエラーは直ります。
自己交差しているとエラーになる
ソリッドモデル自身が交差していることを自己交差といいます。
自己交差しているとエラーになり、モデリング編集ができません。
自己交差が起きていたら、モデリング機能で修復する必要があります。
現在、市場で販売されているソリッドCADでは、モデリング中に発生することはほとんどありません。
しかし、異なるCADで作られたCADデータを取り込んだ時には、発生する可能性があります。
すきまがあるとエラーになる
オブジェクトのどこかにすきまや穴があると、エラーになります。
1面にのみ接している稜線があるとき、開いたエッジというエラーが起きます。
ソリッドは、すべての面が閉じていないとエラーになり、それ以上モデリング編集ができなくなります。
開いたエッジが見つかったら、すきまを埋めたりしながらふさいであげる必要があります。
※Cimatronでは、ハイブリッドCADのため、すきまがあってもエラーは出ません。
オブジェクトにあるエラーは検出できる
CADデータを読み込んで、問題個所を見つけるために、ソリッドの不具合を検知してくれる機能があります。
上画像はCimatronのボディ整合性という機能です。
この機能は、開いたエッジ、非多様体、自己交差がどこにあるかということを解析して、場所を教えてくれます。
修復機能でエラー箇所を修復できる
ソリッドCADには、モデルデータを自動修復する機能が備わっているものもあります。
Cimatronでは、要素チェックと修復機能で自動修復することができます。
この機能は、問題のある個所を自動で検出して、自動修復してくれます。
ソリッドCADに修復機能がない場合、モデリング編集などで手動修正をするか、モデルデータを修復してくれる専用ソフトウェアを購入するなどの方法もあります。
まとめ
今回は、ソリッドモデルでおきる不具合や、その原因と修復方法について書いてみました。
ゼロからモデリングするときは気にしないことも、他のCADソフトに読み込んだ時には、いろんなエラーが起きることが分かりました。
モデルデータをもらったら以下の点に気をつけたほうがいいでしょう。
- モデルデータをもらったら不具合がないか確認する
- 不具合があったら修復する
- トレランス値を確認する
ここまでお読みいただきありがとうございました。
関心をお持ちいただけましたら、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。