加工パス間隔とスカラップとの関係 曲面編

CAMの設定とスカラップの大きさ
プラスチック金型やプレス金型、鍛造金型、鋳造金型の製造において、3次元CAMを利用した場合の加工面荒さと加工パスのピッチとの関連に関してご紹介します。多少なりともご参考になれば幸いです。これからご説明する内容は、以下に該当する方を対象としています。ぜひ、ご覧ください。
- 工具Rの大きさとスカラップの関係を確認したい方
- CAMでパス間ピッチを設定するのに迷っている方

目次
平面上のパスピッチによるスカラップハイト
前回のブログで説明したとおり、工具と工具の通路の間の削り残し高さをスカラップハイトと言います。このスカラップハイトは計算によって求めることが可能です。
しかし、これでは計算が難しいので、h << r の場合に簡易的に
で計算できます。
斜めの平面
斜めの平面の場合は、平面と同じ考えになります。但し、パスの間隔を見る方向が面に対して直交方向ではないので水平面のパスの間隔より小さくなるように見えます。(実加工ピッチの距離では同じになります)
αが大きくなればhの値も大きくなります。αが45°であればhの値は2倍になります。
R面のスカラップの考え方
R面でのスカラップはどう考えるのでしょうか?一定の見解はないようですが、ここではスカラップを面直交方向の高さと考えてみます。CAMの3Dモデルの残り代と同じ考え方で、モデル面に対して法線方向での距離とします。この時、R面半径をR、工具半径をr、スカラップhとすると、接触点の配置角度θは下記のようになります。
R面半径 :R
スカラップ:h
工具半径を:r
接触点の配置角度:θ
R面が凹の場合は下記のようになります。
R面半径 :R
スカラップ:h
工具半径:r
接触点の配置角度:θ
上記の式を使用すると、加工面Rと加工工具R(ボール)とスカラップが決まれば配置角度の計算が可能です。例えば、R100の円筒面で配置角度 θ が0.8°と計算された場合は、180°の円筒面であれば、パスが225本(180/0.8)程度必要ということになります。モデルのフィレットなどを加工する際にパス数の参考になります。
CAM上でのパスの表示は工具先端
曲面上では、平面と異なり工具接触点とパスの位置(工具先端もしくは工具R中心)が異なります。上面から見て等間隔のパスでも加工している接触点の間隔は等間隔ではありません。この様にパスの表示位置が接触点ではありませんので削り残りの位置や形状が分かりにくくなります。形状把握するためにPC上でのシミュレーションが必要になります。
斜め平面のパスの見え方
単純な斜面のパスはどう見えるでしょうか?同じスカラップを指定した場合、水平面のパスと斜めの面のパスはピッチが異なって見えます。具体的には右図の様に水平面と斜めの面では上面からみた場合、同じスカラップハイトのパスでも斜めの面のパスが細かく見えます。
R面(円筒面)の場合のパスの見え方
CAMなどでパスを計算させた場合は、円筒面では工具の加工点とパスの位置(工具の先端)は一致しません。工具パスの位置は接触点(加工点)よりも広がります。従って見た目としてはパス間隔が広がったように見えますが、加工間隔は広がっていません。
R面(円筒面)の場合
凹形状のR面の場合は逆に接触点の間隔よりもパスの間隔が狭まります。しかし、スカラップ値は同じです。
なのでスカラップを指定したパスを真上から見ると大体凸か凹か分かる場合もあります。 右図のように、凸R面は広がって見え、凹R面はパスが詰まって見えます。
真上から見てパスの間隔が一定の場合は、凹凸に合わせて計算されていないことになります。(ほぼ平面に近い場合を除く)この時、パス間隔が一定なので、逆に凸Rの部分はより綺麗に加工され凹Rの所は粗く加工されることになります。
自由曲面の場合
自由な曲面のスカラップ高さを計算したりパスピッチを計算することは手動では困難です。今回の例も円筒面、斜面など断面が幾何学的で一定の形状の例です。全く自由な曲面の場合は、CAMなどのソフトウェアでの計算に任せるしかありません。そのCAMでの計算方法もCAMの種類や加工方法、パラメータで異なるようです。
例えば右図のような形状をCAMでスカラップ値を入力して走査線のパスを作成すると、水平面上の計算されるステップ値よりも半分以下の細かいステップのパスが作成されました。走査線の形とスカラップを守るためにはどうしてもピッチが細かくなります。
この様に、パスの形式やスカラップで実際のピッチが大きく変化します。
弊社販売のCAMシステム: Cimatronではパラメータによって複数の出力方法があます。同じスカラップ値でも異なったパスの様相となりました。
自由曲面は手動でパスの計算ができませんので、CAMのそれぞれのパスの特徴を理解してパス設定を行う必要があります。

結論
曲面でのスカラップ計算やピッチ計算は、円筒面や斜めの平面など幾何学的な形状であれば可能です。傾向としては、同じスカラップ値である場合、凸曲面であれば平坦面よりパス間隔が開くように見えます。また、凹曲面の場合は平坦面よりパス間隔が狭まるように見えます。
これらの傾向を知っておくと、CAMの画面上でのパスを見て仕上がり面の状態を予測したり、異常を発見することも可能になります。
また、自由曲面の場合はスカラップ、ピッチ計算は困難です。CAMソフトに任せるしかありません。しかし、CAMでも走査線、渦状の違いやパラメータの設定などによって計算結果が異なってきます。ご使用のCAMのパスの傾向を確認して設定する必要があります。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
セイロジャパンでは、プラスチック金型やプレス金型用に特化したCAD/CAM「Cimatron」を取り扱っております。
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