Moldex3D 新機能!気泡収縮挙動の予測精度が向上【プラスチック成形 樹脂流動解析】

射出発泡成形モジュールの新機能である「修正Han and Yooモデル」という式を用いた発泡挙動解析機能が搭載されました。
本機能は、射出発泡成形現象を表現するために重要な気泡収縮挙動の予測精度を向上させるもので、
弊社およびMoldex3Dの開発元であるCoreTech System社の他、秋元技術士事務所や金沢大学にもご協力を頂き、ソフトへの実装へと至りました。
弊社は2019年にプラスチック成形加工学会より「青木固」技術賞を受賞しており、 本機能は、同賞における研究を進めた1つの成果となっております。
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プラスチック成形加工学会「青木固」技術賞を受賞しました
以下、新しく搭載された「発泡挙動解析機能」に関してご紹介いたします。

新しい発泡予測モデルの導入により気泡収縮挙動が明らかに
CoreTech System研究開発部 エンジニア 白承弘
気泡成長の動力学的モデル:Han and Yooを採用すると、気泡成長プロセス及び気泡成長の動力学的にシミュレーションを行うことができます。ですが、成形品形状がより複雑で、さまざまなプロセスを使用している場合は、キャビティ内圧力は常に低い状態にあるとは限らず、薄肉部分の溶融樹脂の圧力は高いままで、飽和圧力を超えることもあります。その一方、コアバックプロセス(図1)を用いた場合は、さらに保圧が行われることにより、キャビティ内の気泡は圧力解放によって成長を続けることなく、逆にキャビティ内の溶融樹脂圧力の上昇によって収縮してしまう可能性があります。このような場合、Han and Yooモデルでは限界があり、気泡の収縮現象を正確にシミュレーションすることはできません。

図1 コアバックプロセス

図2 気泡収縮実験

図3 シミュレーション結果と実験結果の比較
これまで、Han and Yooモデルを使用して薄肉形状のシミュレーションを行った場合、気泡の収縮過程を正確に把握することができず、加圧によって消失した気泡の数が過小評価されていました。現在、Moldex3D 2021バージョンには、Modified Han and Yooモデルのオプションが追加され(図4)、従来のHan and Yooモデルと比較すると、Modified Han and Yooモデルを使用した場合では、これらの収縮する気泡をより正確に予測できることがわかります(図5)。同様に、このモデルをコアバックプロセスに応用すると、すべての気泡が溶解して溶融樹脂に戻るのに必要な保圧時間をより正確に知ることができます。
図4 Moldex3D 2021で新たに追加されたModified Han and Yooモデルオプション

図5 Han and YooモデルとModified Han and Yooモデルの比較
発泡プロセスは非常に多様で複雑であり、応用範囲も多岐にわたるため、そのプロセスでの変化を正確に把握することが極めて重要となります。微細モデルによって気泡サイズを正確に予測することができれば、熱伝導、機械強度、吸音、低誘電率といったマクロ特性の予測に役立ち、製品設計と生産効率を向上させることが可能となります。 参考文献
[1] K. Taki et al., “3D NUMERICAL SIMULATION AND EXPERIMENTAL OBSERVATION OF BUBBLE GROWTH AND COLLAPSE IN NITROGEN-GAS SATURATED MOLTEN POLYMER FOR THE CORE-BACK FOAM INJECTION MOLDING”, ANTEC® 2021 – SPE.
原文
・新しい発泡予測モデルの導入により気泡収縮挙動が明らかに
・A Big Step for Foaming Simulation: Bubble Shrinkage No Longer Unpredictable